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能楽師・武田宗典の舞台活動・観劇活動を中心にした日記的四方山話


by munenorin

おもし?

今日は新潟市の「りゅーとぴあ能楽堂」で「秋の能楽鑑賞会」でした。曲目は大曲の『道成寺 赤頭』。シテは山階彌右衛門師です。

昨日の松能会の舞台終了後、そのまま新潟に移動して今日の舞台でした。
『道成寺』は舞台の中心に、人が一人入ることが出来るくらい重くて大きな鐘を吊るす、非常に特殊な曲なので、大道具の鐘だけを担当する「鐘後見」と呼ばれる役割の人たちがいます。

私は今日は人生で二回目の鐘後見でした。

鐘後見は全部で5人。それぞれに明確な役割があります。
簡単に分けると、二人が鐘の上げ下ろしをし、あとの二人がその人達の重りとなって上げ下ろしをサポートし、もう一人が鐘を吊るした綱を結んだり解いたりする役割です。その俗に「綱捌き」といわれる役割を私は以前にさせていただいたのですが、今日させて頂いたのは俗に言う「重し」でした。鐘はとても重いものなので、鐘を引くときに身体が引っ張られないように、綱を引く人に全体重を乗せて、その身体を固定させる役割が「重し」なのです。

実際にご存知の方は良くわかると思うのですが、私は身長こそ174センチありますが、体重はかなり軽い華奢な体格です。正直なところ、この「重し」を自分がする日が来るとは思っても見ませんでした。たぶん適当な人がいなくてお鉢が廻ってきたのだと思いますが、今日幸いだったのは、鐘がそこまで重くなかったということでした。
鐘はそれぞれの能楽堂に備え付けてあることが多いのですが、ここ新潟にはないため、わざわざ横浜能楽堂から運んできたのでした。それが、例えば観世能楽堂にある鐘と比べると、おそらく3分の2程度の重さだったのです。

そんな理由もあって、それほどこの身の軽さが迷惑を掛ける事もなく、何とか無事鐘後見は終了しました。初めてさせて頂く「重し」としてはかなりラッキーだったように思います。しかし、今日の経験や、私が今日重しになった関根祥人さんからのアドバイスをしっかり心に刻んで、いつかまた来るであろう(?)重し担当の日に役立てたいと思います。
by munenorin | 2008-11-23 01:57 | 能楽日記