能楽師・武田宗典の舞台活動・観劇活動を中心にした日記的四方山話


by munenorin

初舞台!

今日は花影会当日。

3歳4ヶ月、章志(あきゆき)の初舞台です001.gif

しかし今日は会の前半、私にはそればかりに集中できない事情がありました。

先日の記事でお知らせしたとおり、会の番組立ては、能「花筐」(シテ・武田志房)「山姥」(シテ・武田文志)に狂言「樋の酒」(シテ・野村萬斎)、それに重鎮の仕舞4番と章志の「老松」の仕舞です。しかし、会の冒頭で「お話」と称する能楽師による解説があり、なぜか今日の担当は私だったのです008.gif

実はこのお話(或は解説)といったものは、能の本番の舞台以上に緊張します。しっかり稽古してきた成果を舞台に上げるのと、その日のお客様の様子を窺ったり、制限時間と戦いながらアドリブ的に話を進めていくのとでは、やはり随分違いがあります。
今日も私は朝からなんとなく気が重く、楽屋入りしてからもさぞ落ち着きがなかったことと思いますが、それでも舞台に出てからは、お客様の温かい空気や舞台の空間が私を奮い立たせてくれたのか、何とか無事(マシ?)にお話を終えることが出来ました。

まずはホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、すぐに引き続いて「花筐」の地謡に出演です。こういう時は、しっかりと気持ちを切り替えてから舞台に出ないと、必要以上に心臓がドキドキしたり、落ち着きを欠いたりするので、そのことに細心の注意を払いました。

「花筐」が終わったところで少し一息ついて、いよいよ次は章志の仕舞です。

今日の章志は、本番が始まる30分前くらいまでは、変に緊張したりすること無く、良い意味でリラックスしたニュートラルな状態。しかし紋付袴に着替えたところでスイッチが切り替わります。
稽古や申し合わせで時たま見ることのあった、少し固い緊張した表情ではなく、気合の入った実に良い顔をしているのです!
また本番5分前の時も、父の友志が確認する一つ一つのことに、大きな声で「はいっ!」と返事をして、自分自身にカツを入れています。本当に頼もしいな、と心から思いました。

そしていよいよ舞台です。

能の舞台では通常、登場の時に拍手が起こることはまず無いのですが、今日は章志が切戸口から出てきた途端、客席から万雷の拍手!まるで宝塚スターの登場シーンのようでした004.gifそれでも動ずることなく、一つ一つの所作をしっかりこなしていき、いざスタートです。
大きな声で「齢を授くるこの君の」と謡って舞い出します。途中気合が乗りすぎたせいか、一瞬ヒヤリとする所もありましたが、うまく後へ繋げて、舞台を大きく使ってすべてをしっかりと舞い切りました。完璧の出来です。

舞い切った後、またもや客席の皆様から割れんばかりの拍手!今度は少しホッとしたのか、舞い終えて座ったままの格好でしばし静止状態。しかしそれもご愛嬌で、拍手が鳴り止むと、また元の通り、しっかりと所作を終えて退場していきました043.gif

無事に初舞台を終えることが出来て本当に良かったです。
一年以上前から老松の謡を口ずさむようになり、今日の舞台に至るまでの友志の稽古の苦労や、この数ヶ月の間で見る間に逞しくなった章志の姿を思うと、ちょっと感動してしまいました。
これからも末永くお客様に愛される舞台人になって行って欲しいな、と心から願っています。

今日は仕舞が終わってからも終演までずっとバタバタしていて、章志をロクに褒めてやることも出来なかったので、今度会った時にはしっかりと褒めて、「舞台が楽しくなるように!」今後も親戚一同で導いてあげたいと思います003.gif
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by munenorin | 2008-11-02 00:25 | 能楽日記