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能楽師・武田宗典の舞台活動・観劇活動を中心にした日記的四方山話


by munenorin

業の肯定

落語家の立川談志曰わく、『落語は人間の業(ごう)の肯定』なんだそうです。

どこか間が抜けている人間を笑い飛ばすことは、人間が誰でも持っている心の弱さを許すことに繋がるということなのでしょう。狂言にも同じような事が言えると思います。

では能楽はなんでしょう?
能楽にも業深い人物はたくさん登場しますが、落語のように笑ってあげることが出来ないくらい、シビアな状況に直面している場合がほとんどです。その多くは神仏の力に よって最後には救われるのですが、それは話の筋立てとはあまり関係なく、どちらかと言えばとってつけたような形になっていることが多いです。また『求塚』や『善知鳥』のように、全く救いがなく終わる作品も存在します。
ただそういった悲劇的な作品のいずれもが、観能後に何か清々しさや美しさといったものを余韻として心に残してくれます。

さしずめ能は『人間の業の昇華』といったところでしょうか?全てをありのままに突きつけ、ありのままに受け入れさせる、そんな力が能にはあるように思います。

今日はなんだかふとそんなことを考えていました。
by munenorin | 2008-10-27 23:39