能楽師・武田宗典の舞台活動・観劇活動を中心にした日記的四方山話


by munenorin

能楽の未来へ

今日は伯父の名古屋のお素人のお弟子さんの発表会「鳳鳴会」でした。日帰りだったので、先ほど帰宅したところです。

名古屋のお弟子さん方はお素人とは言っても、皆さん芸歴20年は優に越えたベテランばかり。中でも一番長い方では50年以上という方もいらっしゃいます。一つの趣味で50年以上続けることが出来るものというのは、通常あまり考えられないですよね?それだけ能というものが奥深く、老若男女問わず楽しめるものだという証だと思うのですが、一方で裏を返せば、新規で始められる方がなかなかいらっしゃらないということでもあります。
この数年ほどはどこの発表会にうかがってもこういった話が出るのですが、今日は特に伯父自身が「このままの状態が続いて能楽が滅びるようなことになってしまったら大変だ」という主旨のことを話していました。この話はまったく大袈裟な話ではありません。私も同様の、というかある意味では伯父以上に切実な危機感を抱いています。観阿弥世阿弥以来650年近く続いている能楽を、私達の代で滅びさせることがあっては、能楽をここまで続けて下さったご先祖の方々に申し訳が立ちません。

確かに能楽は、1回御覧いただいただけで衝撃的に楽しいとか面白いとか、そういった類の芸能ではありません(いくつかそういった曲もありますが)。しかし観れば観るほど、その奥深さや味わいが心に染み透っていく芸能だと思っています。ちょうど噛めば噛むほど味が出るスルメのような感じです。その味わいが、実際に謡や舞をお稽古されると2倍にも3倍にも増すのです。ぜひ一度体験していただきたい、と心から思っています。
古くは豊臣秀吉をはじめとした諸大名も、実際に謡や舞の稽古をしていたようです。そして生涯、その面白さに虜になったのです。
少し極端な言い方ですが、能楽の本当の面白さを体感するのには、文字通り実際に声を出して謡を謡い、身体を動かして舞を舞うのが一番の近道なのかもしれません。「能楽」という芸能には、例えば曲趣がどうとか、演じるのが巧いとか下手とかいうことに関わらず、その芸能自体にとても力があるのです。それが現在まで続いてきた能の普遍性なのだと思います。

皆さん、機会があったらぜひ一度お稽古を体験してみてください。手前味噌ですが、「謡サロン」はとても親しみやすい、良い入り口だと思いますよ001.gif
明日は15時から東京謡サロンです。駆け込みのお申し付けも承りますので、よろしければぜひご連絡ください。004.gif

b0145146_1245911.jpgちょっと堅い話ばかりになってしまったので、最後に愛すべき章志の写真です。今日の鳳鳴会に来ていました。「可愛い顔をして」と頼まれた時の顔なのですが、何度もいろいろな人に頼まれて頬の筋肉が硬直してしまい、結局ちょっと変な顔になってしまいました037.gif
彼は11月の花影会で初舞台を迎えます。彼のためにも、能楽界の未来を明るくして行きたいものです!
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by munenorin | 2008-09-14 01:32 | 能楽日記