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能楽師・武田宗典の舞台活動・観劇活動を中心にした日記的四方山話


by munenorin

『能は能か、演劇か』

今日は『能楽現在形 劇場版@世田谷』ということで、野村萬斎氏が芸術監督を勤める世田谷パブリックシアターでの、ちょっと不思議な能楽の公演でした。
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この『能楽現在形』は、笛の一噌幸弘氏・狂言の野村萬斎氏・大鼓の亀井広忠氏が、現代舞台芸術における能楽の可能性を探る舞台を創り上げるために結成したユニットだそうです。
今日の演目は『融 十三段之舞』(シテ観世喜正氏)の半能と、『舎利』(シテ片山清司氏・ツレ関根祥人氏)でした。私はその両方に地謡として参加させていただきました。
普段の能舞台とは違う、全体が真っ黒に光った板の上での公演。照明・背景の画像・効果音などを駆使して繰り広げられる舞台。そして中央は二段式の八百屋舞台(奥に向かって傾斜がついている舞台のこと)になっています。これだけ普段と条件の異なる中で、果たして面装束を着けて無事舞い終えることが出来るのか、という不安がよぎります。

そして、本番は無事大成功でした!

実は私は10年ほど前の大学在学中から、能楽に新たな可能性を見出そうとするなら、それは流行の新作能や復曲能等の上演などではなく、こういった従来の能の作品の中で舞台装置や空間に工夫を施すことではないかと強く感じていました。そして今回初めてその公演に出演者として立ち会うことが出来たわけです。
演じているものは確かに能なのですが、舞台にもたらされるものはまた様相の違う”演劇”であるなと思いました。お客様がどう感じられたのかもとても気になるところですが、能の作品の持っているテーマを守りつつ、このような試みがなされるのはとても良いことだと私は思っています。
そして何より、今回ここに参加できたことはとても嬉しかったですし、勉強になりました。また、このように自由に空間を使う公演ができるお三方をとても羨ましく思いました。
そのためには能楽師としての実力はもちろんのこと、今後は興行力やある種のカリスマ性も身に着けていくことを視野に入れていかなければなりません。

自分の可能性を信じて、そして周りに居る方々を大事にしながら、一日一日を大切に生きていきたいと思います!
by munenorin | 2008-06-21 00:29 | 能楽日記