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能楽師・武田宗典の舞台活動・観劇活動を中心にした日記的四方山話


by munenorin

いっぱい泣いてください

女子フィギュアが終わりました。

本当に残念でしたが、真央ちゃんは銀メダル。キムヨナ選手が金メダルでした。こんなにドキドキしながらスポーツを観たのは生まれて初めてです。

安藤美姫選手も鈴木明子選手も自身の持てる最大限の力を発揮していて素晴らしかったです。またお母様を競技直前で亡くされたロシェット選手をはじめ、特に最終滑走で登場した皆さんは本当に素晴らしく、レベルの高い大会でした。前回トリノからの4年間で、女子フィギュアのレベルが急速に上がってきたということがよくわかりました。

しかしとにかく凄かったのはキムヨナ選手でした。

ジャンプにミスが無いばかりで無く、抑制と開放とが巧みに組み合わさったメリハリの利いた表情、余裕の感じられるしなやかな手足の伸びなど、本当にうなってしまうほどの出来で、間違いなく誰がどう見ても史上最高の演技だったと言えます。技術面の高さもさることながら、プログラム構成の巧みさと完成度、とりわけ精神面での成熟が、今回の金メダル獲得に辺り最も大きな役割を果たしていたのではないでしょうか?フリー直前での記者会見で『私にとって金メダルは夢だが、もしそれを取れなかったとしても、その事を受け入れる心の準備は出来ている』と言っていた言葉が大変印象的で、「本当に19歳?」と言いたくなるほどの精神年齢の高さを随所に感じました。

キムヨナ選手がフリーで150点という、ちょっと信じられないような高得点を出した時点で、真央ちゃんの金メダルはかなり難しいように思われました。それでも真央ちゃんが持っている全ての力を出し切って演技をしてくれれば、と心に念じて観ていました。そして確かにハイレベルな技術を駆使して演技を終えましたが、少しだけ失敗してしまった箇所がありました。それは画面上で見る限り、技術面での失敗というよりは精神面から生じた失敗のようにも感じられ、そのことが結果的に、金・銀というメダルの色以上に、点数上で二人に大きな開きを生んでしまうことにもなりました。大変残念ですが、これが現時点での力量の差であったのだろうと痛感せざるを得ません。

真央ちゃんは競技終了直後のインタビューで泣きじゃくっていましたね。きっと鬼のような猛練習を積んできたと思うのですが、それがほぼまったく外見に表れない稚さ・明るさが彼女の最大の魅力であると思います。ただ今回はその稚さが何とも痛々しく、見ているこちらまで心が締め付けられるようでした。

でも今はいっぱい泣いて良いと思います。日本国民も皆、心の中で泣いています。悔しさと敗北を心にしっかりと受け止めて、人間として色々な経験をして、それを糧にもっともっと成熟したスケーターになっていってほしいと心から願います。

そして、完璧な演技を終えた後の天真爛漫な満面の笑顔を見られることを、次のオリンピックまでの楽しみにしたいと思います。
by munenorin | 2010-02-26 15:17 | 四方山つぶやき