能楽師・武田宗典の舞台活動・観劇活動を中心にした日記的四方山話


by munenorin

イタリア公演~ミラノ後編~

先日17日は初陽会で「清経」のシテを勤めさせて頂きました。ご来場いただいた皆様、本当に有難うございました。お蔭様で何とか無事に勤めることが出来ました。

清経は元々大好きな曲でしたが、今回稽古の過程から実際に舞台上で演じてみて、より一層好きになりました。また遠からぬうちにぜひもう一度演じてみたいです。


さてさて、前編からだいぶ日が経ってしまいましたが、イタリア公演のミラノの続編をまた書きたいと思います。前回は舞台初日前の所まででしたね。

さて、舞台初日です。
今回の公演は2パターンあり、本公演は舞囃子と狂言『柿山伏』(三宅右矩・近成氏)と半能『野宮』という番組立て。コンサート形式の公演は一調『勧進帳』に素囃子『獅子』と舞囃子という形式でした。最初のミラノ公演2日間は本公演のみで、人間国宝の亀井忠雄師が合流されるトリノ公演からは、会場を変えてコンサート公演も平行して行うというスタイルです。

というわけでミラノ最初の2公演は本公演でしたが、ここでは特に半能『野宮』に関しては、キャンドルを並べて蝋燭の灯りを中心に薄暗い照明で上演をするという形式にして、他にも視覚・聴覚・嗅覚にまで訴えかけられるよう様々に演出の工夫を凝らして公演を行いました。二日間とも、お客様はほぼミラノ市民のみで、日本人のお客様はほとんどいらっしゃいません。この公演はミラノ市が後援しているので、ミラノ市民への還元という意味合いがあるからなのだと思います。

さて、『野宮』といえば六条御息所がシテですが、御息所が源氏の昔を野宮の地で懐かしむという、少し儚げで寂しい情感の漂う能です。間違いなく能の名作の一つではありますが、能にあまり親しんだことの無いお客様にとっては、動きの少なさや静かさに慣れて頂くのが少し難しい作品であるとも思います。にも関わらず、ミラノの皆さん(これはトリノの皆さんも一緒でしたが)は、まったく身じろぎもせず食い入るように舞台に見入っています。そして終了後には万雷の拍手!これは日本のどの劇場・どの公演でもあまり考えられないことで、少なからずカルチャーショックを受けました。
やはりヨーロッパの方の文化への意識はかなり高いです。これはただ単に教育のせい・習慣のせいであるとかそういうことだけではなく、そもそも国家予算の中で何パーセントを文化に投資しているかというような、非常に現実的な国家レベルの文化観の差であると思いました。これを少しづつでも打開していくにはどうしたら良いのか。もちろんまだまだ非力ですが、自分には果たして何が出来るのかという意味で大変良い課題が出来ました。

さて、ミラノ・トリノ共に、本公演はどちらも21時開演でした。日本では考えられない開演時間ですが、あちらではごく通常だそうで、夜も遅くまで起きている人たちが多いそうです。
初日にはゲネや打ち合わせもあったので自由な時間はほとんどありませんでしたが、二日目は17時半に楽屋入りすれば充分だったので、昼ごはんから少しの間観光をすることが出来ました。b0145146_1145750.jpg
じつは従兄の友志の友人が偶然ミラノに住んでいらしたので、そのご夫婦に観光のご案内をして頂くことになりました。まずお昼ご飯に入ったお店は、伯父のお弟子さんから教えて頂いた魚介類の名店。ワインを飲めなb0145146_1194197.jpgいのが大変残念でしたが(笑)、写真のような貝のソテーやイカ墨のパスタなど、どれも大変に美味しかったです。
そしてその後、ミラノでは欠かすことの出来ない観光地、大聖堂ドゥオモへ。実はミラノには数年前にb0145146_1231749.jpg家族で観光で訪れたことがあり、今回は2回目のドゥオモでした。ただ前回は前面は改装中だったので、改装後の綺麗な正面玄関は初お目見えでした。ご存知の方は多いと思いますが、このドゥオモは中も写真撮影することが出来ますし、階段やエレべーターで屋根部分にも登ることが出来ます。一緒に行った出演者サイドは、傳次郎さんと友志、文志と私の4人。冗談を言い合いながら、b0145146_1271399.jpg終始リラックスした雰囲気で観光を思う存分楽しみました。

そして二日目の公演も無事に終了し、翌日にはトリノへ移動します。ここで二人の従兄とはお別れになり、代わりにシテ方は坂口貴信さんが合流し、亀井忠雄師もお見えになります。

では自分にとっては最大のメインであった、トリノ公演の記事もお楽しみに!
[PR]
by munenorin | 2009-10-21 01:33 | 能楽日記