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能楽師・武田宗典の舞台活動・観劇活動を中心にした日記的四方山話


by munenorin

追善「檀の会」

今日は松木千俊氏主宰の、檀の会当日。

私は『江口』のツレと『熊坂』の地謡でした。今日上演の能2番共に出演させて頂いたことになります。

『江口』のツレは、後場のごく数分の登場時間ですが、江口の遊女としての華やかさを引き立てるために重要な役どころだと思っています。そしてやっぱり演じてみると、色々と課題がありますし、シテを引き立てるためにはまだまだ精進しなければならないなという思いになりました。

そして『熊坂』は千俊氏のご子息で高校2年生の崇俊君。
『熊坂』は長刀を持って暴れまわる能なので、まず若手が演じるには徹底的な稽古で舞台に上がるための強さを養うことが必要とされます。その意味で、もちろんあらゆるところがすべて粗い感じではありましたが、思い切りの良さは評価できる内容であったと思います。

さて、今日の会は千俊氏のお父様、松木千冬氏の17回忌追善という特別な会でした。追善会というのは、ご先祖様に対して私達子供達はこんな風に頑張っていますよ、というある種のご供養の意味を持った会です。『江口』も『熊坂』も追善の演目としてはよく選ばれる能です。
そして今日は会のあとに能楽師だけの宴席があり、そこで千冬氏の思い出話や、今日の『江口』はどうだった、との批評の会にもなるわけです。
千俊氏はそんな場を「とてもありがたいことです」と何度も仰っておられました。この謙虚な姿勢が、次の舞台への熱い思いとなり、稽古への新たな原動力となるのだと思います。

自分を客観的にみるというのは本当に難しい作業です。それが出来るようになるには私自身まだまだ時間が掛かります。そのためにも先輩方、時には同い年の仲間からのご意見というのは本当にありがたいものなのです。誰からも何も言われなくなってしまったらおしまいです。
そして芸の階段は一気に駆け上がることは出来ません。一段ずつ着実に上っていかなければ実を結ぶことはきっとないのです。

また明日もしっかりと稽古に励まなくては、と思った今日一日でした。
by munenorin | 2009-01-25 23:38 | 能楽日記