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能楽師・武田宗典の舞台活動・観劇活動を中心にした日記的四方山話


by munenorin

『乱(みだれ)』

今日は朝から研究会申し合わせ、終了後に千歳の稽古を挟んで、午後からは今年最後の武田同門会でした。

今日は能は『橋弁慶』『龍田』『乱』の三番。それぞれ見どころのある曲目ですが、今日のメインは何と言っても『乱』です。シテは伯父の家で長い間修行を積んだ、佐川勝貴氏。

『乱』は『猩々』という曲の特殊演出のことで、謡の詞章は全て『猩々』と同じです。ただお囃子による舞の部分が、『乱』という水の上を遊び戯れるような大変特殊な足遣いの舞になり、20分以上舞いっぱなしです。ですから曲目の名称そのものが『乱』に変わってしまうのです。

この『乱』という曲は「披き物」という、能楽師にとって大変重要な難曲で、若手にとっては登竜門的な曲です。今回佐川さんは、それを初めて勤めた(披いた)ことになります。

今日は無事に舞台を勤め上げていたように思います。
途中ヒヤッとしかかる場面がありましたが、自分自身でしっかりと切り替えて、まったく目立たないようにうまくつないでいました。そして何より、存分に稽古して今日の日に臨んだのだな、ということが舞台を通してしっかり伝わってくることが大変好印象でした。

同門会終了後には佐川氏が主催で、出演者の皆さんを招いての宴席がありました。彼なりの精一杯の皆様への感謝の気持ちが形となって現れたものです。本当に無事に済んで良かったな、と心から思います。

私はまだ『乱』は披いていませんが、近いうちに必ず・・・と考えています004.gif
by munenorin | 2008-12-17 01:09 | 能楽日記