能楽師・武田宗典の舞台活動・観劇活動を中心にした日記的四方山話


by munenorin

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丹後物狂

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一昨日は日帰りで宮崎の日向市で公演でした。そして今日は天橋立です。昨日伊丹空港から車で一時間半ほどで到着しました。思ったよりは時間が掛からない印象です。

なぜ天橋立まで来たのかといえば、復曲「丹後物狂」の公演のためです。「丹後物狂」は天橋立を舞台にした男物狂の名作で、世阿弥の得意曲だったと言われています。今回、観世宗家が力を尽くされ、上演の運びとなりました。シテはもちろん観世宗家で、重要な役どころである子方をご子息の観世三郎太さんが勤められました。そして私も地謡の末席として参加させて頂くことになりました。

復曲で、しかも屋外の仮設舞台での上演と難条件の重なる公演でしたが、大勢のお客様方にも恵まれ、何とか無事に終了しました。


さて、天橋立と言えば日本三景として有名なところです。実は仕事で来たのですが、朝方に少しだけ時間があったので、親戚の武田尚浩さんとその長男の祥照君と、少しだけ観光をしてきました。それが写真の成相寺です。山の上にあるお寺でしたが、空気が澄んでいてとても気持ちの良い空間でした。
さらにタクシーの運転手さんのオススメの展望スポットである、成相寺の頂上の展望台へ。実に見事な景色で、天橋立はもちろんのこと、日本海や敦賀、大江山などが一堂に見渡せます。また天橋立といえば、股越しに逆さに眺めると景色が宙に浮くようで良いと言われていますが、それを実践中の祥照君をパチリ。彼とは日向市の公演も一緒だったので、この3日間は家族より一緒に長く過ごしました。

そして4枚目の写真は楽屋での1コマ。実は会場であった智恩寺文殊堂は、別名「猫寺」と呼ばれるほどたくさんの猫がいるところで、楽屋にも構わずに進出してきてウロウロと寛いでいました。楽屋に大勢の猫がいるというとても不思議な光景でしたが、皆とても行儀が良くて人懐っこかったので、あっという間に楽屋に溶け込んで人気者になっていました。

そして今は、天橋立から福知山経由で宝塚に移動の車内です。明日は宝塚で約半年ぶりの謡サロンです。最後の一枚は途中の小さな駅から撮りました。雲が茜に染まり、とても美しい景色でした。

明日が済むと明後日からは行橋です。旅に明け暮れる毎日です。
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by munenorin | 2009-10-24 18:00
先日17日は初陽会で「清経」のシテを勤めさせて頂きました。ご来場いただいた皆様、本当に有難うございました。お蔭様で何とか無事に勤めることが出来ました。

清経は元々大好きな曲でしたが、今回稽古の過程から実際に舞台上で演じてみて、より一層好きになりました。また遠からぬうちにぜひもう一度演じてみたいです。


さてさて、前編からだいぶ日が経ってしまいましたが、イタリア公演のミラノの続編をまた書きたいと思います。前回は舞台初日前の所まででしたね。

さて、舞台初日です。
今回の公演は2パターンあり、本公演は舞囃子と狂言『柿山伏』(三宅右矩・近成氏)と半能『野宮』という番組立て。コンサート形式の公演は一調『勧進帳』に素囃子『獅子』と舞囃子という形式でした。最初のミラノ公演2日間は本公演のみで、人間国宝の亀井忠雄師が合流されるトリノ公演からは、会場を変えてコンサート公演も平行して行うというスタイルです。

というわけでミラノ最初の2公演は本公演でしたが、ここでは特に半能『野宮』に関しては、キャンドルを並べて蝋燭の灯りを中心に薄暗い照明で上演をするという形式にして、他にも視覚・聴覚・嗅覚にまで訴えかけられるよう様々に演出の工夫を凝らして公演を行いました。二日間とも、お客様はほぼミラノ市民のみで、日本人のお客様はほとんどいらっしゃいません。この公演はミラノ市が後援しているので、ミラノ市民への還元という意味合いがあるからなのだと思います。

さて、『野宮』といえば六条御息所がシテですが、御息所が源氏の昔を野宮の地で懐かしむという、少し儚げで寂しい情感の漂う能です。間違いなく能の名作の一つではありますが、能にあまり親しんだことの無いお客様にとっては、動きの少なさや静かさに慣れて頂くのが少し難しい作品であるとも思います。にも関わらず、ミラノの皆さん(これはトリノの皆さんも一緒でしたが)は、まったく身じろぎもせず食い入るように舞台に見入っています。そして終了後には万雷の拍手!これは日本のどの劇場・どの公演でもあまり考えられないことで、少なからずカルチャーショックを受けました。
やはりヨーロッパの方の文化への意識はかなり高いです。これはただ単に教育のせい・習慣のせいであるとかそういうことだけではなく、そもそも国家予算の中で何パーセントを文化に投資しているかというような、非常に現実的な国家レベルの文化観の差であると思いました。これを少しづつでも打開していくにはどうしたら良いのか。もちろんまだまだ非力ですが、自分には果たして何が出来るのかという意味で大変良い課題が出来ました。

さて、ミラノ・トリノ共に、本公演はどちらも21時開演でした。日本では考えられない開演時間ですが、あちらではごく通常だそうで、夜も遅くまで起きている人たちが多いそうです。
初日にはゲネや打ち合わせもあったので自由な時間はほとんどありませんでしたが、二日目は17時半に楽屋入りすれば充分だったので、昼ごはんから少しの間観光をすることが出来ました。b0145146_1145750.jpg
じつは従兄の友志の友人が偶然ミラノに住んでいらしたので、そのご夫婦に観光のご案内をして頂くことになりました。まずお昼ご飯に入ったお店は、伯父のお弟子さんから教えて頂いた魚介類の名店。ワインを飲めなb0145146_1194197.jpgいのが大変残念でしたが(笑)、写真のような貝のソテーやイカ墨のパスタなど、どれも大変に美味しかったです。
そしてその後、ミラノでは欠かすことの出来ない観光地、大聖堂ドゥオモへ。実はミラノには数年前にb0145146_1231749.jpg家族で観光で訪れたことがあり、今回は2回目のドゥオモでした。ただ前回は前面は改装中だったので、改装後の綺麗な正面玄関は初お目見えでした。ご存知の方は多いと思いますが、このドゥオモは中も写真撮影することが出来ますし、階段やエレべーターで屋根部分にも登ることが出来ます。一緒に行った出演者サイドは、傳次郎さんと友志、文志と私の4人。冗談を言い合いながら、b0145146_1271399.jpg終始リラックスした雰囲気で観光を思う存分楽しみました。

そして二日目の公演も無事に終了し、翌日にはトリノへ移動します。ここで二人の従兄とはお別れになり、代わりにシテ方は坂口貴信さんが合流し、亀井忠雄師もお見えになります。

では自分にとっては最大のメインであった、トリノ公演の記事もお楽しみに!
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by munenorin | 2009-10-21 01:33 | 能楽日記

ホームページ更新

マイホームページ、まず第1回の更新をしました。

舞台情報等ももちろんなのですが、以前より少し見ていただきやすいようにカーソルバーやメニュー表示仕方などに改良を加えました。

実際にオープンしてみないとわからないことがたくさんありましたが、皆様からのご意見を元にこれからもより良いページ創りを目指していきます。何かお気付きの点がございましたら、お問合せ先のメールアドレス等にご意見いただけると大変嬉しいです。

どうぞ宜しくお願いします。
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by munenorin | 2009-10-10 00:51 | 能楽日記
大変大変遅くなりましたが、そろそろ忘れないうちに先月のイタリア公演についての記事を書きます。
今回周った都市はミラノとトリノ。まずは旅の前半であるミラノ編をお伝えしたいと思います。

まずその前に今回の公演について簡単にご説明します。

今回の歌舞伎と能のお囃子の団体である『三響会』さんからご依頼を受けて伺うことになったものです。『三響会』さんは能楽大鼓方の亀井広忠さん、歌舞伎のお囃子の田中傳左衛門さん、田中傳次郎さんの三兄弟が立ち上げている団体で、今回は三男の田中傳次郎さんが舞台監督・プロデューサーとなり企画が実現しました。傳次郎さんは私と同い年で小さい頃から交流があり、そのご縁もあってお声掛けいただいたものです。二人の兄上はお見えになりませんでしたが、お父様の能楽大鼓方の人間国宝・亀井忠雄先生がトリノ公演からお見えになりました。

演目は2パターンあり、メイン公演では舞囃子と狂言『柿山伏』と半能『野宮』が行われ、劇場を変えたコンサート形式の公演では、一調『勧進帳』と素囃子『獅子』と舞囃子が上演されました。
シテ方は、私の他には従兄の友志・文志と坂口貴信さんという極少数メンバーでした。しかも従兄二人はミラノ公演のみ、坂口さんはトリノ公演とミラノコンサートのみで、ほぼフル参加するのは私だけだったので、公演演目のほとんどの役をさせて頂くことになりました。


出発は先月17日朝。そこまでの一週間は特に仕事が目白押しで究極の睡眠不足・時差ボケ生活だったので、逆に行きの飛行機で程よくしっかりと休むことが出来、現地に入ってから時差ボケを感じることはまったくありませんでした。17日現地時間の23時頃ミラノのホテルに到着し、そこで傳次郎さんから「ミラノ・トリノの両公演に参加するから、宗典君は演出補佐・スタッフとして打ち合わせにも参加して下さい」と言っていただきました。東京での打ち合わせの時から、シテ方の連絡役という役割をいただいていましたが、これにはとてもびっくりしました。と言っても迷惑だったとかそういうことではなく、むしろ逆に、海外公演でこのような役割をいただけることが大変嬉しかったのです。傳次郎さんは既に多くのプロデュース公演で演出・舞台監督の実績がありますし、そのノウハウをぜひ間近で学びたいなとかねてから思っていました。また自分が大学の時にミュージカル部の演出をしていた時の感覚がどこまで通用するかを試してみたいとも思いました。いずれにしても約10年ぶりに、舞台演出のスタッフワークに本格的に参入することになったわけです。その晩から早速現地スタッフと1時間ほど顔合わせと簡単な打ち合わせをして、終了後には傳次郎さんと軽く一杯飲んで床に着きました。

ミラノ滞在は18日から21日まで。18日は打ち合わせのみで、19日・20日が公演です。21日にはトリノに移動します。

b0145146_4565464.jpg翌日は朝から傳次郎さんと楽屋に入り、スタッフ達と演出の打ち合わせです。劇場はデル アルテ劇場。収容人数500人ほどで、小ぢんまりとしてはいますが空間・照明等が上手に使われています。日本では意外とお目にかかることが出来b0145146_4573511.jpgないタイプの劇場かもしれません。ここでは傳次郎さんの発案で蝋燭を使って蝋燭能をすることになったのですが、現地の消防法の確認や、どのようにキャンドルを配置するか、また楽屋の作り方b0145146_54537.jpgや照明の作り方まで、昼過ぎまで綿密に打ち合わせをしました。私はほとんどその遣り取りを聞いているだけでしたが、色々イメージを描いていたので大変有意義な時間でした。

そして頭を使っb0145146_5283711.jpgておなかも減ったので、外に出てお昼ご飯を摂る事になりました。実質上の現地第一食がこのピザです。ご存知マルゲリータ。この後イタリアでは10食以上ピザを食していますが、初めてということもあったためかこのピザが一番美味しく感じました。チーズはとろとろ。やはりピザは出来立てに限ります。値段も5.5ユーロ(750~800円)と比較的手頃な値段でしたし、大変満足のいくご飯でした。

b0145146_5373791.jpgそして午後からは全演者が劇場に入り、翌日の打ち合わせとなりました。翌日からの公演は21時開演という、日本ではありえない開演時間の夜公演なので、実質夕食を全員でゆっくり摂る事が出来るのはこの日だけでした。というわけb0145146_538115.jpgで打ち合わせ終了後には、ホテルから程近いレストランで全員でご飯をしました。ホテルはミラノ中央駅すぐ脇のヒルトンホテルだったのですが、この近くには美味しいレストランがいっぱいあります。この後もミラノ滞在中は、b0145146_5384775.jpg昼ごはんで外したことは一度もありませんでした。

さて、写真は上からポルチーニ茸とパルミジャーノチーズのサラダ、ムール貝の白ワイン蒸し、そしてスーパーマリオのカットするローストステーキです(笑)。ムール貝の酒蒸しは午前中から食べたいと言っていた傳次郎さんリクエストでしたが、自分の中の大ヒットはポルチーニ茸のサラダ。ちょうど季節物で、トリュフやマツタケにも劣らない上品な香りがあり、それが旨み濃厚なパルミジャーノ・レッジャーノとライムの酸味と大変マッチして、いくらでも食べられてしまう究極の一品でした。
ここで皆で気勢が上がり、翌日からはいよいよ公演です!

さて、ミラノ編をすべて書き切ってしまいたいと思いましたが、やはりかなり長くなりそうなので続きはまた次回にしたいと思います。
ミラノ後編もお楽しみに!!
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by munenorin | 2009-10-09 05:50 | 能楽日記